鋼板加工ニュース
2022.12.20
2022.12.21
2022年の鋼板相場から考える
ことしも最高値を更新
鋼板相場は2022年も過去最高値を維持・更新しました。
厚鋼板は年初トン13万円台半ばから始まり、年末は14万円台半ばで終えそうです(19ミリ厚・定尺品)。メーカーの望む相場はさらなる高値でしたが、そこまでは至りませんでした。
高い相場が維持された背景はさまざまですが、今年のキーワードは何といってもウクライナ侵攻と円安でした。
それによる資源高(石油・石炭)が相場を下支えしました。電力料金が異常な高騰を見せたことも今年の特徴でした。
別世界の価格帯
鉄鋼相場が切り上がり始めた2年前は8万円台でしたから、短期間で2倍近い水準になりました。
メーカーは値上げ姿勢をまだ崩していませんから、今後のさらなる高騰も危惧されます。まさに別世界の価格帯と言えるでしょう。
過去50年の価格推移グラフを見ると、いまが異常な高値圏にあるのは明らかです。
急反落を心配する声は根強くあります。14年前のリーマンショック後のような事態を身構えざるを得ません。
しかし今のところ大きな変動はなく、高値を維持しつつジリ高で越年しそうです。
恐らくは14年前の暴騰・暴落の記憶がまだまだ鮮明であるため、冷静なビジネスが展開されたのでしょう。
安いニッポン、買い負けするニッポン?
鋼材価格は海外事情に大きく翻弄されます。鉄鉱石も石炭も輸入頼みです。「国産材」といってもスクラップ以外の材料はほぼ海外です。
だから今年の異常な円安は、極めて心配な事態です。日本経済は過去30年間に低迷し続け、アジアのいくつかの国々に追い抜かれてしまいました。
すでに日中経済が逆転して10年以上がたち、GDPは4倍ほどに開きました。
※世界経済のネタ帳
https://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=WEO&d=NGDPD&c1=CN&c2=JP&s=&e=
さらに今年は「1人当たりGDP」で韓国と台湾に追い抜かれました。
※日本経済新聞 2022年12月14日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1021O0Q2A211C2000000/
コロナ禍が収束すると中国人観光客が再来するでしょう。
「日本は安い」と訪日します。
一方、日本人が海外旅行を楽しむには経済低迷と円安でハードルが上がりました。
30年前に中国留学を経験した私には、これぞ「隔世の感」です。当時は1万円も換金すると1カ月は生活できましたから。
しかし、いまや中国やアジア勢が貪欲に消費し、日本は内向きで縮小する。
こうした事態が資源(鋼材)でも起きないかどうか。国際市場で日本が「買い負け」しないかどうか。杞憂であることを願います。
鋼材相場の変遷を眺めながら、日本経済の国際的な立ち位置を考えこみました。30年間の停滞を経て「高値」の鋼材価格が降りかかったのがこの2年間です。
日本経済の復活に向けて、私たちは鋼材流通・加工の立場から何が出来るでしょうか。
強い日本経済を取り戻すために企業1社1社が何をすべきか、いまこそ考えたいものです。