鋼板加工ニュース

2021.11.14

2021.11.24

鋼材市場

厚鋼板相場が史上最高値!これからの鋼材相場について考察


■ 13年ぶりに最高値を更新

当社が扱う厚鋼板の相場が10月下旬に過去最高を更新しました。トン当たり「12万円台」の後半(19ミリ厚・定尺品)。

これはリーマンショックのあった2008年以来の高値更新です。

昨年末の「8万円台」から急ピッチでの切り上がり。この1年間で約5割も値上がりし、歴史的な相場です。

■ 私が経験した過去20年の鉄鋼相場

私自身は1998年から鉄鋼業界に従事しています(当時29歳)。
バブル経済崩壊後の一つの大底で、大手証券会社や都市銀行の破綻が続出。景気が冷え込み鉄鋼需要も激減して「鉄冷え」と称されていました。

厚鋼板相場も歴史的な安値水準でトン「3万円台」にまで落ち込んでゆきます。少なくない企業が倒産・廃業、そして統廃合となります。

その後、2000年代半ばから「爆食」というキーワードとともに中国経済が大きく発展します。世界中の資源が中国に向かいました。

厚鋼板相場も「7-8万円」に回復します。

■ 大波乱だった2008年

そして大波乱の2008年を迎えます。

夏の北京五輪に向けてあらゆる金属類の価値が上がり、「マンホールのふたが盗まれる」という社会現象も出現しました。

スクラップ価格は7月に最高値のトン6万円水準を記録(特級・H2)。つれて厚鋼板相場も過去最高水準の「13万円」近辺まで急伸。

そのタイミングでリーマンショックが世界経済を痛打します。

需要が激減して鉄鋼相場も急落。スクラップ価格は年末に6,000円水準まで暴落。半年で10分の1です。

厚鋼板相場ももとのトン「8万円台」に向けて足早に値を下げました。

この急伸と急落で鉄鋼業界は大きな痛手を負いました。当社も創業以来の大きな赤字を計上しています。

素材産業である我々は米国経済の動向、中国など新興国の台頭、原油相場など、つまりは海外事情に大きく翻弄されます。考えてみれば鉄鉱石も石炭も輸入頼みです。

■ 過去40年の鉄鋼相場を眺めて

バブル経済を経験した60代の鉄鋼マンが「今回のような高値は初めて」とおっしゃたのが印象的です。

そこで日経平均株価と鉄鋼相場を比べてみました。
いかがでしょうか。

1990年代以降は「なんとなく」相関関係があるようにも見えます。

しかし1970年代、80年代は国内景気と鉄鋼相場には必ずしも同じ動きではないようです。外為も影響するでしょうが。

1973年以前の鋼材価格は調べがつかなかったのですが、同年の第1次オイルショック以前の鋼材価格は今年のようにトン「10万円」を超えていたようです。

1973年と言えば「昭和48年」です。その時の10万円は、どれほど値打ちがあったか。

当時の日経平均株価(ダウ平均)は5,000円以下。物価も相応に低く、例えば大卒初任給は「7万円」レベルです。

オイルショックから40年後のいま、大卒初任給は3倍ほど(約20万円)。

きょうのテーマとはやや外れますが、初任給は過去30年間ほぼ頭打ちで上昇しておらず、これは日本経済が平成30年間いかに停滞していたかを物語ります。

では、この40年間の鋼材価格はどうだったか。

オイルショック直後の急落、そしてバブル崩壊後の下落では半値以下になっています。

いまは「最高値更新」とは言えど、オイルショック以前の水準をようやく回復した、とみることもできます。

■ こんごの鋼材相場は?

よく「タマゴは物価の優等生」と言われますが、40年スパンでみると鉄鋼価格も同じような感じを覚えます。

1960年代、70年代の高度経済成長時代とは、いまの私たちの実感よりもはるかに「高価」な鋼材を使って社会を作り、そして力強い経済成長を遂げた時代だったと言えるのではないでしょうか。

これからの鋼材相場がどう展開するか、それは誰も断言できません。

ただ、多くの現役ビジネスマンにとってリーマンショックはわずか13年前。その経験はまだまだ鮮明です。なので、急な下落は考えづらいのではないでしょうか。

加えて、新興国のさらなる成長と鉄鋼需要に伴って、未知の高水準になる恐れもあります。

過去30年間の停滞で傷んだ日本経済に、国際商品である鋼材の「さらなる高値」が降りかかるかもしれません。決して望まない未来ですが、空想次元のことではないでしょう。

弊社は鉄を商い続けて今年で70年。どんな時代になろうとも、質の良い素材を厳選し、丁寧な仕事でお応えする。その覚悟を新たにいたします。

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